寿ぎの歌

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■円環少女(10) 運命の螺旋/長谷 敏司
http://www.kadokawa.co.jp/lnovel/bk_detail.php?pcd=200902000004

妹の舞花が既に世に居ない事が仁の行動原理の一端であったのに、その妹が復活した。
前巻で神和にも指摘されていたように、仁の行動は軸が通ってブレないようなものではないんですね。覆せない過去の積み重ねと置かれた状況下で、その時に出来ること信じるものを選択している。舞花が生きているかも知れないってわかっていたらここまでこんな行動は取らなかったであろうに、それを根源から揺さぶるこの仕打ち。
しかし「何故今頃になって復活したのか」という部分も含め、舞花についての描写は先送りされます。むしろこの重要過ぎるファクターを活かすための周辺状況の盛り立てこそが今巻の見どころでありました。いつになったら真正面から扱うのかと思っていた様々な要素が一気に動き出しましたね。メイゼルが何故刻印魔導師であるのかもやっと語られました。

いやーそれにしてもメイゼルの母ちゃん・イリーズが持つ能力の凄まじたるや。巻を追うごとにチート級が登場してくる今シリーズにおいてもイリーズは別格中の別格でしょう。地下戦争編辺りから魔法に機械を組み合わせたらやばいですよというのをやってるけど、真の実力者が魔法使いらしく力を探求し機械を駆使したらどうなるかの規模がですね、なんかもう計算するのもやめたくなるほど圧倒的。よくここまで思いつくものです。
一方、魔法使いなのに力の探求を拒むきずなに降りかかる試練はこれまで以上に過酷でどうしようもない方向へ。今まで “逃げてきた” ことにバチがあたったかのように、遂には自分の手で人を殺すに至ってしまう。逃げも隠れもしないメイゼルが歩んで行く道とは対照的。さてここからどうやって立ち直るのか。

他にも本当に見どころが多くて、感想をまとめるにもまとめ切れない一冊。
残り3冊でどういう落ち着け方をするのか気になりつつも、以後次月で。


■星界の戦旗V 宿命の調べ/森岡 浩之
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21106.html
■SFマガジン2013年5月号(星界特集)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/721305.html

前巻から実に8年3ヶ月ぶりの新刊。去年の6月頃に再読していた時「なんか再コミカライズ始まったけど、まさかシリーズ再開フラグじゃないよねえ」などと言っていたら本当に再開フラグだったとは。
対人類統合体星間戦争の行方は、中立の立場にあった(と思われた)ハニア連邦が突如アーヴ帝都へ侵攻を開始した事で大きく動き出す事に。ハニアが一枚岩ではなかったことやその規模を読み間違えていた事などが重なってアーヴは帝都ラクファカールまでをも陥落されるのですが、未曾有の危機だからこそアーヴがアーヴ足り得る所以を垣間見た気がしましたね。宿命遺伝子の存在によって君主に反抗する概念がないのでこういう時に混乱をきたさないし、仲間への帰属意識が物凄い強いから、それを守るためであれば自らの死をも厭わない。
やっぱりアーヴという特異な種族そのものについて語られている時の方が星界は面白いです。戦旗の前巻まではアーヴがそこまで追い込まれていなかったので、戦闘のあり方ばかりが目立っていましたから。

今回で戦旗第一期を完結として、意向としては第二期をやるつもりではあるようです。それがやるやる詐欺ではない事を示すためでもあるのか、SFマガジンには星界の断章最新短編も収録。毎回猛烈に間が空くのは待つ方も辛いので、再開したからにはコンスタントに続きが出て欲しいものですね。
一応期待はしています。

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