荒れ野を繋ぐ奇蹟

4月 27th, 2013 No Comments »

個々でエントリ起こすつもりが、気が付いたら殆ど読み終えに近い状態に…。

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■円環少女(11) 新世界の門/長谷 敏司
http://www.kadokawa.co.jp/lnovel/bk_detail.php?pcd=200905000535

表紙からして、物語が次のステップに進んだことを示しています。あれだけ戦いを拒み批難して来たきずなの手に銃がある。
つい数ヶ月前まで本当に只の女子高生に過ぎなかった彼女に銃を持たせるまで11冊かかってますが、戦争放棄をした現代日本に生きる一般市民の日常に銃は存在しないわけで、そこに非日常を突き刺すにはこのくらいの段取りでむしろ普通でしょう。力は考え方も社会も生活も変えてしまう。ある日突然銃を渡されてバンバン撃てる方がおかしいのです。
“こっち” から “向こう” へ渡ることで生じる変化がどれだけのことなのか、またそういった者の取り扱いがどれほど慎重を期することなのか。元より展開の広げ方に慎重なこの物語において、その中でも特に気を使って来た要素が遂に転化を始める、後半戦の開始にふさわしい巻でありました。

今まで溜め込んで来た物の多さもあって、この後半戦からの状況変化は劇的かつ圧倒的なスピード感でしたね。きずなが再演魔導師としての才能を開花させる・2人目の再演魔導師が誕生する・王子護によって全世界に魔法の存在が大っぴらにされる・世界に核の雨が降る・神なき世界に神が降臨し地球世界が再演世界として固定される・《協会》の黒幕であった《九位》が敗北する・再演大系の終着点と役割が明示される…これが全部この巻での出来事、シリーズでも屈指の情報密度です。情報密度は1巻も相当なものでしたが、状況が見えてくるのとそうでないのとでは話の加速度が全く異なりますね。
題材としてはファンタジーなんだけど、緻密な描写と溜め・飛躍はどちらかというとSFを読んでいる気分になりますな。


■円環少女(12) 真なる悪鬼/長谷 敏司
http://www.kadokawa.co.jp/lnovel/bk_detail.php?pcd=200909000467

続く12巻では、死んだも同然の状態にまで追い詰められるも死ぬことを許されないきずなが魔法使いとしての生き方を自覚、自分なりの落とし所を見つけて前に進み始めるまでが主だった展開に。その姿は凛々しくて、しかし彼女なりの優しさも残されている。仁との距離の取り方も、近すぎ離れすぎから丁度良い折り合いをつける事が出来た気がします。新しい彼女がそこにいた。

一方で仁も魔法消去能力としては最強の《真なる悪鬼》へと覚醒するのですが、仁にしてもきずなにしても言えるのは「今まで散々迷っていたのに、ここからはもう迷っていない」。彼らはここまで人並み以上に紆余曲折があったかも知れないけど、そこには積み重ねて来た “何か” がある。今までの自分があったから、最も大事な場面で行くべき道に迷わない。
積み重ねは裏切らないのだ、という描き方は正しくラノベしてるな、って感じですね。しかしまあ、仁ときずなってほんと似たもの同士だな。


■円環少女(13) 荒れ野の楽園/長谷 敏司
http://www.kadokawa.co.jp/lnovel/bk_detail.php?pcd=200909000468

そして最終巻。
11巻のところでも書きましたけど、円環少女って魔法バトルものというわかりやすいコンセプトとは裏腹に展開がかなり慎重なんですね。最初は東京近辺でしか物語を展開させず、アメリカが関与して来たのが4~6巻の地下戦争編、ヨーロッパを拠点にしている《連合》が絡んで来たのが10巻。地球世界ではない他所の魔法世界が直接描かれたのも9巻という遅さ。
いくらでも広げられるけど責任が取り切れなくなるから風呂敷をずっと抑えめにして来ただけに、冒頭や中途で何度か挟まれる「再演秩序がもたらす10万年後の世界」の描写のスケール感には感慨深さを覚えます。一足飛び感なくここまで持って行くのは本当に大変な事だったと思う。

最終的には、過去をやり直してより良い未来にしたい願いから生まれた再演大系という名の奇蹟と、実力行使でなく意志と言葉で誰もが他人と繋がる事の出来る救いから生まれた魔法消去という名の奇蹟、この2つが未来の果てで直接対決。仁が勝利して再演大系が敗れ、人間の手で未来と秩序を築く結末に。
仁が勝てたのは、作中で彼が言ってますけど彼の実力だけではありません。地球世界には、魔法で社会が構成される事なく努力と積み重ねでここまで築き上げた来た秩序がある。それをある日やってきた神様が秩序を強制するには、地球世界は人が多すぎて複雑強固に社会が出来過ぎていた。
不可能を可能にする夢物語でなく積み重ねの現実が最終的に勝利する。仁やきずな、メイゼルなど個々の生き様としての「積み重ねは裏切らない」を、最後で世界そのものに相似適用させて終劇とした、気持ちの良い大団円だったと思います。

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長谷せんせの本は一般文芸進出後に読み出して、円環少女は魔法バトルものということで長らく後回しにして来ましたが、終わってみれば読んで本当によかったシリーズでした。自分の中にいくつもの “何か” を残してくれたものになっています。
今年度中には、次の新刊…MGS3/PWのノベライズも出ますかね。作を重ねるたびに緻密な描写と思索性を増していくせんせの今後にも期待しています。

XAC-1導入記

4月 21st, 2013 2 Comments »

■ゲーミングコンピュータデスク XAC-1
http://micomsoft.co.jp/xac-1.htm
▼マイコンソフト,ゲーム用デスクや1080p/60フレーム対応のキャプチャカードなどを「CEATEC JAPAN 2012」で披露
http://www.4gamer.net/games/017/G001762/20121002085/

買いました。
実物見てないと凄さがわかりづらいのですが、この机ゲーミングと銘打つだけあって、32インチの液晶モニタがあれば汎用ビデオ筐体ビュウリックスと各種寸法がかなり近くなるように出来ています。これで満足出来ないのであれば筐体買えという、それだけの代物です。買わない理由がないでしょう。

巨大な段ボール×5と、70Lポリ袋を6つ消費するほどの発泡スチロールを先に片付けてから組み始めます。


脚と横板を組み…。


足元の棚板と台座を組む。この窪みに天板を乗せ…。


机とモニターアームと液晶モニタをガッチリ取り付けて…。


部屋の片隅はこうなった。本来モニタの上に生えるべきインストパネルは取り付けを省略しています。これをやってしまうと後ろのスクリーンが隠れてしまうので。
その壁のお手製スクリーンは3/31のエントリ時点から若干改良。プラスチック段ボールに直接テーブルクロス(光沢なし)を巻いていた間へ黒の羅紗紙を挟む事で、乱反射を減らしました。


さっきの窪みは収納スペースに。そこそこの深さがあるのでジョイスティックが難なく仕舞えますね。常時使うわけではないアップスキャンコンバータや、基板の配線周りなどの雑多なものをドサドサと。


モニターアームは90度ごとにロックがかかります。基板やアーケードからの移植で縦画面ゲーに触れる事がない人にはよくわからない感覚かも知れませんが、画面を簡単に回せて且つロックがかかって安定するというのは、シューティングをよく遊ぶ人間にとって非常に重要なんですね。最近は回転出来る機構を備えたモニタも多いとは言え、全てが簡単に縦画面に出来るとは限りませんし、TVだとそもそも縦置き想定していません。XAC-1はTV用のマウンターも付属していて、あらゆる画面の回転を行う事が出来るようになっています(もちろん重さと大きさの制限はある)。
また今回初回出荷購入特典として、アーケードのコンパネをそのまま取り付けられる天板が付属していますが、それそのものは持っていないのでとりあえずは従来通りにジョイスティックで。

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パーツ数37・ネジ&工具数151・梱包含めた総重量88kg。この手にありがちな微細なネジ穴寸法ズレもない質の高さで、組み立ては見かけに反してびっくりするほど簡単でした。満足度は非常に高い。
昨年末からちょこちょこと環境を変えていた自室のPC&ゲームまわりはこれにて一段落かな。本当にこれ以上ゲームに向いた机はありえないので、ずっとずっと使っていきたいものですね。

時砂の糸電話

4月 13th, 2013 No Comments »

■コロロギ岳から木星トロヤへ/小川 一水
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21104.html

「天冥の標」刊行中の合間に、書き下ろし新作が登場。
どーして小休止とか言いながら油断出来ない面白さの本が出て来るかなあ(笑)。21世紀と23世紀を股にかけた糸電話型歴史改変SFであります。

一水作品としては貴重な位置づけにある作品です。というのも、頻繁に新作を刊行するも1冊で終わる長篇というのが案外少なくて、短篇集か複数巻跨ぎが多くを占めているんですね。「短篇集は読んだけど長篇は重いしなあ。気軽に読めるものをもうちょっと挟みたいのだけれど」というところを見事に突いています。まあ、そういう編集のオーダーだったみたいですが。

そういうテーマもあってか、物語の進行はかなり楽観的。歴史を改変する可能性は必ずしも良い方向とは限らないはずなんだけど、試行錯誤していたら1冊どころかシリーズものになって小休止じゃなくなってしまいますからね。そこら辺かなり割り切っていて、そして一水先生イズムの「希望ある結末」へと収束していきます。
本当に気軽に読み進めて行けるので、小休止や一水作品開拓し始めとして大変おすすめ。ジャンルが同じ「時砂の王」と併せて読んでいいかも知れません。


■ソードアート・オンライン12 アリシゼーション・ライジング/川原 礫
http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-891529-8/

アンダーワールドとはどのような場所なのか。それを10巻では外部から描き、逆に内部世界に生きる者からやっているのが今回のライジングになります。

しかし…キリトとユージオが央都に辿り着いて以降、急に面白くなくなっているような。全体の展開を優先しているのが見え透いているような気がしてなりません。
辺境でキコリゼーションやっていた頃までは話を動かす要素もそんな多くなかったんで、ひとつひとつがミッチリ描かれていたように思います。しかし央都に辿りついた辺りから行く手を阻む敵が急激に増え、設定の風呂敷を広げすぎているせいで絡む要素がえらい事になり、それを消化するので精一杯という印象を受けるんですね。今回は特にそれがひどい。

ではそこまでして優先したいテーマが何かっていうと、やってる事は「仮想空間計画」と同じですから、とりたてて凄いわけでもない。元より世界設定的には奇をてらっていないSAOが勝負する点は、世界が生きているかのように見える濃密さであったと思っているんですが、それがアインクラッドにあるのにアリシゼーションには足りていない。SAOってこんなにバトル描写が大雑把じゃなかったと思うのだけど。
アインクラッド辺りの密度でやってるといつまで経っても終わりそうにないのはわからなくもありませんが、消化されてるかも怪しいものを読んでいてもあまり気分は良くありません。
正直この数巻ほどはテンションちょっと低いです。

アインクラッド編をもう一度一層から書き直す、濃密さを更に濃い方向へ持って行こうとしているプログレッシブシリーズの方が、今は楽しみかも。

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年度が変わりました。
昨年度の読書量は71冊23,511頁。一昨年度の83冊28,518頁が自分にしては多かったので、月1冊相当分が減ったのは予定通りといったところ。しかし読んでいる時期に若干ムラがあり、無理のかかっている期間が全体の2割くらいあったのは反省点です
今年度は量を維持しつつ、もう少しペースを均したいな。