美しくも底なしに悲しい最期を前に

1月 28th, 2013 No Comments »

■天冥の標VI 宿怨 PART 3/小川 一水
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21094.html

遂にI巻への繋がりが見えましたね。
惑星ハーブCへの入植から300年後を描いたI巻の、その300年前の出来事にようやく辿り着いたのです。一体どうやって辿り着き、そもそもどこにある星だったかも明らかにされました。されたんだけど、なんてこった。こんな事になっていようとは。

このシリーズ、今までも反転に次ぐ反転で先の見えない展開が多かったのですが、今回の “太陽系規模の致命的な悲劇 “は話が大きすぎて、VI-3では流石にその収束に終始するとばかり思っていたのです。ジェットコースターで言うとVI-2がコース中最大落差最大加速で、あとは終着点にそれなりの速度で入っていくような。
ところがこの期に及んでまさかの更なる反転。途中まであったレールの先が無くなってるような状態だよこれ。なすがままに放り出された身体の着地点は確かに本来目的としていた場所ではあったものの、同じ辿り着くでもレールの上を辿ったのと投げ捨てられたのとでは全く訳が違うのであり…。
459頁で「えええマジで!?」と思わず声が出てしまいましたよ…。

凄いのはそれだけではありません。
時間を遡ったII巻以後5巻7冊作中年表500年分という長丁場をここまでテンション落とす事なく乗り切っただけでも十分驚異ですが、それ以上に驚異であるのは “これだけやっときながら通過点に過ぎない” ことであります。X巻構成と公言されてるまだVI巻が終わったところなんですよ。年表で最も肝心な部分が接続した以外は依然として混沌かつ謎なままで、太陽系人類を巻き込んだ高次知性体ミスチフとノルルスカインの思惑と行く末や、VI-3の中盤でシリーズ名「天冥の標」をサブタイトルに使用した意図、IIで過去に話が行ってしまったのでIの最後で派手にやらかした以後の時系列も全く不明です。風呂敷はむしろまだ拡大中であるとさえ言えるんです。

この底なしで遠大な群像劇の果てに何が待ち受けているのか、想像が全くつかず只々見守るしかありません。今の段階で言えることがあるとすれば、一水先生って元々風呂敷広げたまま放ったらかしたりせず、また大体において絶望的なバッドエンドでなく前向きな終わり方を志向する方なんですよね。多分天冥もそういう方向でしょう。この状態でどんな希望をどうやって見出だせというのかとも思いますが、きっと一水先生ならやってくれる。
’10年代日本SFを代表する一作になるのは間違いありません。今からでも読むべし、です。

さようならは、再会への約束

1月 19th, 2013 No Comments »

■UFOはもう来ない/山本 弘
http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-80914-4

昨年刊行されていた本ですが1ヶ月ほど遅れて読みました。
どうして遅れたかって、やっぱりどうしてもハードカバー単行本だと覚悟して読まなければいけないみたいに気構えてしまうんですね。タイトルからしてこんなだし560ページもあるので「神は沈黙せず」や「地球移動作戦」のような大ネタをかます重めの話かと思っていたのです。
しかし読んでみたらそんな事は全然なかった。構図としては地球に不時着した異星人を誘拐するカルト教団vs奪還に奮闘する子供探偵団+大人がメインで、子供がいるおかげもあってかノリは終始軽め。事態を動かすアイテムも東急ハンズやホームセンターに売ってそうなものばかりで、これは意図的に軽くしているんでしょうね。舞台となる範囲についても、後半で大きく動くまではだいぶ狭いです。
一方で異星人スターファインダーの設定やカルトとしてのUFOにまつわるエトセトラは異常なほど細かく盛り込まれており、説得力としての地盤はかなり強固。この濃さと軽さという水と油のような掛け合わせを、見事分離させず乗り切るバランス感覚はさすがとしか言えません。菜穂が後半全然出番ないのを何とか出来なかったのだろうかとは感じたけど、でも気になったのはそのくらいかな。

人によってはウンチクが鼻につくかも知れないものの、SFやカルトに詳しくなくても入り込みやすい良作だと思います。氏の長編著作の中だとMM9シリーズに立ち位置が近いかしら。ネタとしては濃いけど読みやすい、という意味でですけどね。

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最近、物語を綴る上での責任はどこまで持つべきなのかみたいな事をよく考えます。
銃でもタイムトラベルでも魔法でもそうですが、我々が日常見ている社会に無いはずのものが当たり前にある状況下では、当然考え方も異なるわけでしょう。そういう異なる考え方だけで形成された社会とはどのようなものであるのかまで考えるべきであって、ギミックとして面白いから使うってのは無責任な気がするんですね。その無責任さが、言葉を変えればセカイ系だと思っていますが。
責任を取るにはそもそもの発生する責任を小さくするか、わかってて無視する手もあるけどそれは逃げであって、そう考えて行くと小説に限らず物語を創作するという事は深い知識と考察を要する、非常に難しいはずのものではないかと。
ウチは別に作家志望ではありませんが、探究心を持つ事の重要さというのを今改めて感じている次第です。

夢のように、夜明けのように

1月 12th, 2013 No Comments »

新年あけてました。
どれだけの方がこのblogを読んでらっしゃるかはアクセスログを取っていないのでわかりませんが、今年もよろしくお願いします。

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■円環少女(7) 夢のように、夜明けのように
http://www.kadokawa.co.jp/lnovel/bk_detail.php?pcd=200612000040

シリーズ7冊目は、本編とは大きく趣を変えコミカル要素満載の短編集。
本編では出来ないであろう方向性を目指した結果、キワモノだらけになって大変な事になってます。しりとりで愛を形作って召喚したら世界が崩壊しましたとか、小学生男子の洗ってない上履きを食う人とか。物語世界を大きく広げる事には貢献しているのでこれはこれで楽しかったんですが…どうしてこうなった…。そしてそれに巻き込まれまくる普通の地球人、寒川さんの明日はどこへ。
しかしコミカルだからと好き勝手やりたい放題かと言うと、決してそういうわけではありません。確かにいつも以上の変態さんいらっしゃい状態ではあるものの登場する魔法体系には本編同様の綿密な設定が用意されており、あくまでその中に準じてはいるのです。「これ本編じゃないし短編だから」と無責任なことをしないあたり、真面目な作家性がうかがえますね。うかがえてしまうからこそ、この先6冊がキツいとも言えるのですが。

先の展開がかなり気になりつつ、今月は下旬に天冥の標VI完結編というこれまたヘビー級が待ち構えてますんで、円環少女については読む側のメンタル的なコンディションと相談しながら残りを進める感じで。暖かくなる頃には終わらせたいな。

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年明けてからこれと言って面白い出来事は特にありませんが、近況らしい近況というと…姪にお年玉あげたら風邪をもらいました。これがなかなかにしつこくて、いつもならパブロン微粒を栄養ドリンクで流し込めば1日で戻るところを3日くらいかかり、10日経っても喉は全く治らない有様。
子供からもらう風邪って、どうして悪化しやすいんですかね…。不思議なものです。