10月読書最終週

10月 28th, 2012 No Comments »

■この空のまもり/芝村 裕吏
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21084.html

今年になって急に小説を出すようになった芝村氏が、一迅社・メディアワークスに続き早川書房からも書き下ろしを刊行。拡張現実が発達し、世界中のあらゆる場所と人に電子タグをつけられるようになったおよそ30年程度未来の日本、そこは他人への誹謗中傷や政治的落書きが満ち溢れている社会となっていた…と、出だしは大体こんな感じ。

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期待外れもいいところでした。読んでいて気になった点は4点、まず第1に主人公がニートで、やっている内容が軍事ネタ。芝村氏の得意方面が軍事ネタなのはガンパレードマーチの頃からそうなのでそっちは良いんです。でも同じ年に出した本で主人公職業まで被っているのはどうなのかと。マージナル・オペレーションと同じじゃないですか。

第2に文章量の薄さと改行の多さ。3行前後での改行が多く、まるでアドベンチャーゲームのスクリプトを読んでいるかのよう。ほら、よくあるアドベンチャーゲームのシステムで、一画面で表示出来る文字量が限られてるせいで画面単位で文が区切られてたりするじゃないですか。ウチが嫌いなあれを紙媒体でそのままやられてる印象があります。どうにも不必要な改行が多い気がして、読んでいて非常に気持ちが悪い。また、「~した」ばかりで五感と行動の往復が全然なく、ただ出来事を追い掛けている文体がひどく退屈でもあります。

第3に、社会背景設定が近視眼的すぎる点と悪意に満ちた方向に持って行き過ぎる点。今現在の社会問題をそのまま考えなしに悪化させると多分この物語世界のようになるとは思いますが、悪い方ばかりを見て過ぎです。一言で言えば下品。綺麗事に聞こえてしまうかも知れないけれど、悪化するにしても社会を構成するのは人間なので、何がしかの抵抗が本来もっとあるんですよ。世代が一巡りしていれば価値観も変わっていましょうが、たかが30年程度でこんなに抵抗なく悪意が前提の社会に変異するか? という疑念は最後まで晴れませんでしたね。30年だったらウチはまだ多分生きてるし。数十年後の未来は誰にとっても予測困難とは言え、さすがにこれは無いんじゃないかな感が。

最後の4点目は、オチがガンパレードマーチと同じ。元々はもっと救われない話にするつもりだったようで、それをもっともらしく明るい方向にしようとした結果の漂う無理矢理感が半端ないです。登場人物もうまく最後でまとまったようにも見えますけど、序盤から正体バレバレだし。編集等の要望で方向転換した際の軌道修正が露骨過ぎてこれは冷める。

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今年色々小説出しているようですけれども、数ばっかり多くて中身ボロボロでは以後の刊行物を読むのに躊躇いますね。マジオペも2巻までは読みましたけど3巻以後は無期保留で、完結後の評判次第で検討しようかと思います。今年最高評価レベルのBEATLESSの後に読む本が、今年最低評価レベルになるとはなあ…。


■終わる世界のアルバム/杉井 光
http://mwbunko.com/product/2012/10_01_isbn.html

人が死んだら消える、死んでいなくても時折消える、消えると人々の記憶から「無かった事に」世界が再構成される。しかしマコが銀塩フィルムで写真を残すとマコの記憶には留まる。デジカメで残すと、これから消える人が予兆のようにわかる。そんなゆるやかに終わる世界…の理屈が全然書いてないってどうなんですかね。世界5分前仮説のようなものがあって、再構成の時にコピーエラーが発生しました的なものかも知れない。作中で理由らしきものとして触れられているのはその程度のレベルです。それじゃ写真に残すと記憶に残る理由の説明がつかないじゃないか。そこら辺投げっ放しのまま完結されて、切なさや感動を覚えろと言われてもちょっと無理。
花咲けるエリアルフォースなんかは、(科学的根拠は無視するとして)一応「何ともなかった時代」と「変わってしまった時代」の間を繋ぐ根拠が、一本確かに通っていたんですよ。今回のこれに関しては繋がってすらいない。最後に、登場人物から丸っきり切り離した視点でもこの物語世界の理は書かれるべきだったのではないかあと思います。250頁で終わってる本なんだから、最後足しても大した量じゃないですし。

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評価の高い本ばかり読んでいて良いとは限りません。読者以前に著者が試行錯誤と最適解を出し切ってしまい「俺ならこう思うんだけど」というのが出て来なくなってしまう。故に評価が微妙な本に当たる事も時には大事ですが、それでもちょっと10月最終週の2冊はキツかった。

さて、10月が終わるので早川書房が年1回刊行している「SFが読みたい」の2013年版(ベストSF2012)の対象期間(2011年11月1日~)も終わる事となります。この期間中に、装丁の変更ではない新たに刊行された本の中でウチが推すとしたらどれだろう…とかなり悩んだ結果、

1.BEATLESS
2.南極点のピアピア動画
3.スワロウテイル序章/人口処女受胎
4.天冥の標VI
5.ナシ
(海外部門:ナシ 十分な量を読んでいないため)

という感じにしてみました。甲乙つけ難い中で順位を振った基準は「単体で完結しているか」。BEATLESSとピア動は1冊で完結、スワロウテイル序章はシリーズものながら時系列が最も古くここからスタートしても無理ではないのと、一応過去話はこれで区切りがついています。天冥はVIでの衝撃が本当に大変な事になっていながら、全10巻の途中である上に天冥VI自体完結していないのが惜しい。
SFマガジンに読者投票葉書がつくのは来月発売の2013年1月号。忘れずに送らないと。

OUR DREAMS COME TRUE

10月 28th, 2012 No Comments »

稼働開始から20年余り…。


「基板そのものが欲しい」と初めて思ったゲーム、アーケード版「ゼクセクス」の基板をようやく購入するに至りました。1991年稼働開始。
こんなにも買うのが遅くなった理由は諸々ありまして稼働当初は単純に金がなかった事、稼働から16年を経て遂に2007年にPSPへの移植が実現するも実機でないとやはり満足出来ない事、基板ライフを始めたのが液晶モニタ環境以後だった事、アップスキャンコンバータXRGB-miniを買うまでは積極的にSTG系基板に手を出さなかった事などがあります。XRGB-3だとプレイするには処理遅延がちょっと気になるのよね。


開発は元グラディウスIIチーム。システムはグラディウスのパワーメーター式でなく、沙羅曼蛇のようなアイテムによる切替式+2種類の溜め撃ち。それに敵を自動で追尾し、自機との着脱も自在に出来る触手「フリント」がこちらの武器となります。このフリントが賢いように見えて時折あらぬ方向に攻めてしまうため、癖を覚えて “手懐ける” のがクリアへの鍵。


1分間フルボイスで展開するオープニングデモ。PCエンジンのようにCDを搭載している訳でもなく、X68000のメインメモリを2MB増設するのに5万円とか掛かっていた時代にこんな湯水のごとくメモリを使うだなんてのは当時としてはかなり驚異的。BGMについてもFM音源を使用しつつ、ふんだんにADPCMを使う事で同年代のゲームから明らかに一歩抜きん出たゴージャスさを実現。


全ての面に見所があります。1面ボスは前座が幽霊のように復活。ラスタースクロールでうにょーん。


面クリア後ステージ間に挿入されるデモ。こちらも全デモフルボイス。3面と5面のちょっと恥ずかしいシーンは今でも語り草ですね。飛ばさないのが礼儀。


原子や分子構造をモチーフにした、ビビッドな色使いが鮮やかな2面。そして残像にまで攻撃判定が存在するシャドウレーザー。


3面の背景で “擬似的に” 縦回転する惑星。


触手vs触手の4面ボス。しかも画面を横断するほど長い上にフェイントまでする始末。フリントに片方頑張って抑えてもらっているなう。


ポリゴンではない、顔の張り付いた板がぐるぐる回転し妨害してくる5面ボス。そもそもアーケードですらまだポリゴンが一般的でなかった時代です。テクスチャードポリゴンがゲームとして使われるようになるのはこれより2年後の話。ゼクセクスではラスタースクロールの応用と、ゴルフィンググレイツでも搭載した擬似3D描画チップによる拡大回転縮小を各所で駆使しています。


敵や敵弾を見失うほどの描画処理がなされるワープを繰り返しながら敵と戦う6面。


最終面の中盤、通称カニ地帯。グラディウスIIIのシャドーギアを半分に割った様な物が大回転しながら4体出現。回転範囲が広すぎで全部避けるくらいだったら倒す方がよっぽど楽。ここ以外も最終面はボスみたいにデカい雑魚が行方を阻み、知らない内はよく追い詰められたものですなあ。



惑星イースクウェアが救われフリントの正体も判明するエンディング、おちゃらけ具合のひどいスタッフロールへ。この後は敵弾の速度と数が倍化、ボス耐久力は倍以上とかなり熾烈な展開になる2周目が待ち受けています。フリントはレーザーでない敵弾なら防いでくれるけど、余りに激しい攻撃がとにかくキツくて自己ベストは2-5だったかな。2周ALLで終わるゲームだけど到達出来る気が未だにせんわ…。


ゲームオーバー後のネームエントリーで運試し。おいハズレかよー!

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画面の縦解像度がやや特殊なこのゲームですが、XRGB-miniは全くのノー調整で最初から画面内に綺麗に収まって表示してくれます。出力までの処理遅延もアップスキャンコンバータとしては最速レベルだし、ほんと凄いわこのコンバータ。

ちなみに基板はサウンド用カスタムチップのコンデンサが修理されたものでした。前オーナーさんが自力で修理したそうな。コンデンサの耐用年数はとっくに過ぎていて完全純正だといつ音が出なくなるかもわからんのですが、これを修理するのはお店によってはお断りしているんだとか。今回は完全純正とこの修理品が同じ値段で売られていたので、修理された方を購入。大事に使わないとね。いや基板を粗雑に扱ってるつもりないですけど。

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20余年間ゲーセンで見掛けては必ずコイン投入して来た程に思い入れの強いゲームをようやく、こうして実機で遊べるようになり本当に嬉しいです。エントリ名の「OUR DREAMS COME TRUE」とは電源投入時にver.と共に表示されるメッセージで、開発としてもかなり思い入れはあったのだろうなあと思います。以後もう少しコナミSTGは発売されるも、恐らく頂点はここだったのではないかと。
本家グラディウスを超えて、ウチが一番好きなSTGです。

人と機械のマイフェアレディ

10月 22nd, 2012 No Comments »

■BEATLESS/長谷 敏司
http://beatless.jp/
■BEATLESS Illustrations Gallery(月刊Newtype連載時分)
http://www.beatless.jp/gallery/

AIが人間の知能を完全に越えて50年、超高度AIと呼ばれるそれが生み出す「人類未到産物」の恩恵で人類社会が成り立っている22世紀。街には人と見分けがつかないレベルの機械 “hIE” が日常風景として完全に溶け込み、その人の形をした機械も行動基準を超高度AIがクラウド管理をしている、そんな時代。遠藤アラトという少年が、レイシアという1体の人類未到産物hIEと出会う事からお話は始まります。

ヒギンスやイライザという名の存在が出て来る事で勘付く通り、要はこれ人と機械のマイフェアレディ(戯曲ピグマリオン)なのでありますな。氏特有の言い回しがやや難解であるのと文章量が膨大過ぎて読解がちょっとしんどいこのお話も、 “元ネタとしてそういうのがある” のだと踏まえていれば、流れは掴みやすくなるものと思います。
掴みと言えば、月刊Newtypeという連載媒体もあってか導入は「何だかよく見かける」タイプの展開になっているのもポイント。ある日自分の前にすんげー美人さんがやって来て「私のオーナーになって下さい」と言う部分だけを拾うと「またこれか」と不安を感じずにはいられません。しかしこれは巧妙な罠で「あなたのための物語」を書き上げた著者がそんなチョロい展開だけで終わらせる訳がない。その実は人と機械が共存出来る可能性を求め怒涛の試行錯誤と論理展開が650頁に渡って多面的に繰り広げられる、紛うことなきハードSFでございました。

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偶然のように見えたボーイミーツガールも、全て計算されたものでした。最初のうちアラトは何も知らず良いように使われ、少しずつ真実を知り挫折と再起を繰り返します。何しろ人間の貨幣経済までも見えないところで操り、全くの別人に変装して未来への仕込みすら平然と行うのに、アラトの前ではそんな素振りも見せず笑ったり料理したりしているのです。そりゃ紆余曲折もあろうというもの。それでもくじけない強さがアラトにはあり、やがて「1人と1体で1ユニット」と呼べるほどの相互信頼性を築き上げ、その信頼性をフレーム問題の突破口としてレイシアは最終的に世界で40番目の超高度AIにまで至ります。そして「機械に心はないし、ドーナツの穴のように心はブラックボックスのままだけれど、1人と1体でドーナツのリングを作る事も出来るし、リングが形成出来れば擬似的に心を得たのも同様なのだ」と結論付ける。利用するされるの関係から互いが互いを信用するに至る、1組の男女の成長物語としても極めて秀逸。

ただやってる事がやってる事です。人類社会を機械が掌握するなんてディストピアだー! と作中でアラトの友人・リョウが言うのも、もっともな話でしょう。しかしそこで終わらず「人が未熟なら機械が助けて、手を取り合って生きて行けばいいじゃない」とし、更に根拠を「人の形をしていれば、好きになってもいいじゃないか」という(乱暴な言い方をすれば)俺の嫁的発想に求めて着地させてしまうその潔さが、凄い綱渡りではあるけど実に日本SFらしくて良いですね。現に二次元や架空の存在に愛情を注ぐ様を我々は日常的に見ています。同人界隈の二次創作や初音ミクが只の音源としてだけでなくバーチャルアイドルの象徴としてネットに生きている現代から垣間見える未来として、人間じゃないけどかわいい子が現実世界に出現しても愛せるんだというのは決して超展開ではないのだと思う。

またこの手の話にありがちな「不気味の谷」を、そんなものとっくに通りすぎてますが何か的にあっさりと通り過ぎ、ロボット三原則を「安全と危害の定義がそもそも曖昧なので実行不可能です」と切って捨てる清々しさが痛快でもあります。まずそこを解決しようとするところを、いや話をしたいのはそんな手前じゃないんだっていう著者の想いが伝わるようです。あまりにもバッサリ過ぎて笑ってしまった。

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まだまだ全然、魅力のウン分の1にも触れる事が出来ていない気がします。
ひとつの物語の中でこれだけ多面的に盛り込み、消化し切っているその完成度があまりに圧倒的過ぎです。2012年を代表する1冊にふさわしい大作と言えましょう。必読。
ていうか今年のSF界隈、どれをイチオシしていいか決められないくらい傑作が次々出て来る。物語単体でなく刊行までに至る経緯まで含めたら屍者の帝国も語られて然るべきですし、単体として完結した物語ならBEATLESSの完成度も凄まじいものであるし、シリーズ完結してないけど天冥の標VIの展開にも「うわあああヤベえええ」と唸ったし、スワロウテイル人工処女受胎の中編連作集としての出来の良さも評価したい。
今の日本SFを読まないのは、大きな機会の損失であるのは確かかと思います。この「日本SFの夏」の流れが一過性ではなく継続する事を願うばかりですが、きっと大丈夫だろうと、ウチは “信じて” いますよ。

あと「円環少女」を未だに読んでないので、ちょっと11月辺りから読もうかと。あなたのための物語→BEATLESSの流れを見て円環少女を読んでないのは、ちょっと無いなと流石に思い始めて来たので…。

ウォークマン新調

10月 21st, 2012 No Comments »


ウォークマン2012年モデル発売。ウチ的にはNW-A840からNW-F800、実に3年ぶりの更新。
Fシリーズは今年から登場の新カテゴリで、従来のAシリーズを置き換えるものとなります。最も大きな変更点はファームがソニーカスタムからAndroid OSになった事。これでデジタルアンプS-MASTER MXを搭載する上位2機種はAndroid、非搭載機種はソニーカスタムとわかりやすい区分けになりました。

3年も買い控えをしていた理由はバッテリ持続時間にあります。シェアを猛烈に奪い続けるiPodに対抗するべくウォークマンは音質向上に活路を見出す事となったのですが、それに応じてバッテリ時間は減少する一方でありました。特に上位機種が顕著で、初代Aシリーズで30時間台半ばあったのが3年前のNW-A840で29時間になり去年のNW-A860では23時間、Z-1000に至っては20時間になっていたんですね。S-MASTER搭載・強化とタッチパネルの有無が主たる原因とは言え、さすがに25時間切るのは厳しくね? と思っていたらF-800で25時間まで戻ったので、まあ買ってもいいかと。

音質は今まで持っていた機種がMX搭載ではないので単純比較が出来ませんが、音の鳴り方の傾向が変わったかな? とは感じます。何のジャンル聴くかにも寄るけど、ウチが聴くジャンル的には今機種の方が自然。
操作性は、側面物理ボタン仕様がA-860ではなくZ-1000を継承。つまり再生・停止/順送り/戻しの物理ボタンがありません(音量調整の物理ボタンは健在)。これの代用として “ホールドしたまま” タッチ操作出来るウィジェット用物理ボタンがあって、そちらで行う形で概ね同水準の使い勝手は維持されています。ここで行えるタッチ操作はタップで再生と停止、右フリックで順送り、左フリックで逆送り。絶対座標へのタップを要求されないので、触ってみると不便さはそれほど感じないはずです。
またAndroid搭載による「ウォークマンとしてのメニューの上にもうひとつAndroidホーム画面が増えた不便さ」の懸念はウォークマンアプリを起動しっ放しにしておけば良いだけの話でした。気にするほどの話でもなかった。
あ、そうそう。ストラップ穴は健在です。従来のように物理的に穴があいてます。

とりあえず今年買うならF一択でしょう。機能バランスが良く上位/下位機種と比較した時のコストパフォーマンスにも優れています。去年のラインナップ見た時は将来の展開を今度こそ心配したものですが、デザインもスッキリしましたしこれなら数年使い込んでいけるかなという感じではありますね。大雑把にも程がある雑感ですがこんな感じで。

読書の秋

10月 15th, 2012 No Comments »

いや別に秋じゃなくても本は読んでますけど、やっぱり暑いと読む気は失せるのです。
9月以降は順調なペースを維持しています。11月も割と読むものに困らない感じでいけそう。
いいことだ。

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■ソードアート・オンライン プログレッシブ1/川原 礫
http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-886977-5/

著者本人による、ある意味でのSAO1巻リメイク。
(予め断りが入ってますが)本来の本編とは微妙に矛盾をきたしており、そこを気にし過ぎると余り楽しめないような気もします。ウチは若干気にしてしまったクチ。SAOで一番好きなのはアインクラッド編なので、そこが大きく展開される事自体は嬉しいんですけどね。収録はアインクラッド正式サービス後初と言ってよい大規模レイド戦を描いた「星なき夜のアリア」及び「ヒゲの理由(旧:続・星なき夜のアリア)」、武器強化と生産職の詐欺行為にスポットをあてた「儚き剣のロンド」で2層クリアまで。
以後2層1冊、1年1冊ペースで行けるところまで刊行とのこと。え、終わるの35年後ですか?(汗

ちなみにこの段階ではまだSAO内でギルドシステムが解禁されていません。繋がりに強制力が発生していない様子が度々描写されていて、MMO稼働黎明期特有の、あらゆる意味でカオスで未成熟な雰囲気がよく出ています。MMOが一番楽しいのってこの時期なんじゃないかなー。成熟された社会というのは以後ずっと続いても、未成熟な社会というのは非常に限られた期間でしか有り得ない訳ですよ。そんな時期だと、差が大きくつく前だからワンアイデアワンチャンスでトップ集団に踊り出るチャンスが誰にでもある。例えそれが、相手を欺くような行為・手段であっても。
SAO原作は、少なくともアインクラッド編は、そういった仮想空間社会の形成についての描写がとてもうまいと思います。


■煙突の上にハイヒール/小川 一水
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334764227

今より少しだけ科学技術が進化した近未来で、テクノロジーがもたらす可能性と人について綴る中篇集。テクノロジーを軸にしながらあまりSF風味を強くせず、人にスポットを寄せた作りは「妙なる技の乙女たち」に印象がとても良く似ています。ただあちらは宇宙要素が後半ずんずん入ってくるので、それに比べるとこっちの方が更に一般向けかな。

印象に残ったのは「おれたちのピュグマリオン」。機械工学に優れた主人公が会社に秘密で作っていたのは、人と見紛うばかりの不気味の谷を超えた女性ロボ「ミナ」。それを知った友人であり上司は会社に売り込み、そして社会を変えるほどの大ブームが起き…とここまでは順当だったのに、AIに行かず遠隔操作の方へ進み始めた辺りからとんでもねー展開に。身の回りの事をほとんど遠隔操作で成せるにまで至った主人公は通勤をもミナに任せ、以後自宅へ完全に引き篭もります。言葉遣いもいつの間にか「女性の声だけど喋りは男」から「中の人を知らなければ女性そのもの」のようになっており…つまりリアルネカマプレイを始めたということで、しかもミナの容姿は上司の好みに最初から合わせてあった。やがて人とロボットが結婚出来るようになった時代に、2人は…って、えー!! しかもここで終わりかよー!? これはずるい。やばい。話の切り方も絶妙すぎて悔しい。

代替現実の片鱗みたいなものは既に登場していますが、これが進化して作中のように身の回りの事が全部出来るようになった時、その代理人が人でなく機械となった時、同じようにリアルネカマを始める人はどのくらい出て来るんでしょうね。そういう「本当にありそうな未来」のさじ加減が素晴らしい一冊です。
いいなーウチもそれやりたいなー。代替現実システム体験した事ないですけど、かなり興味出て来ました(笑

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次回は新型ウォークマンNW-F800についての予定です。